歴史ある名器として知られているストラディバリウス。
「ものすごく高いヴァイオリン」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
最近ではテレビ番組の楽器の聴き比べなどで登場することもあり、ヴァイオリンを弾かない人にも名前が知られるようになりました。
でも、ここで気になるのが、
「ストラディバリウスで一番安いものはいくらなの?」
ということですよね。
ネットオークションなどを探していると、数万円や数十万円で「ストラディバリウス」と書かれたヴァイオリンを見かけることがあります。
「億円もするって聞いたのに、40万円くらいで買えるの?」
と思ってしまいますよね。
実はここには、かなり大きな落とし穴があります。
アントニオ・ストラディバリ本人が製作した本物のストラディバリウスと、「ストラディバリウス」の名前が書かれたコピーやモデル品は、分けて考える必要があります。
今回は、ストラディバリウスで一番安いものはいくらなのか、なぜ数万円の商品まで存在するのか、そして本物はなぜこれほど高いのかを分かりやすく紹介していきますね!
ストラディバリウスで一番安いものはいくら?
結論からいうと、本物のストラディバリウスについて「一番安いものは○○万円」と簡単に決めることはできません。
ストラディバリウスは一般的な新品のヴァイオリンのように、メーカーが定価を決めて販売している楽器ではないからです。
製作された年代や種類、保存状態、修復歴、過去に誰が所有していたのかといった来歴などによって、一つひとつ評価が異なります。
そのため、ネット上で数万円~数十万円程度で見かける「ストラディバリウス」を、本物のストラディバリウスの最安値だと考えないことが大切です。
本物のストラディバリウスの価格は?
本物のストラディバリウスとは、17~18世紀にイタリアのクレモナで活躍したアントニオ・ストラディバリ本人によって製作された楽器です。
スミソニアン博物館によると、ストラディバリは生涯に1,100点以上の楽器を製作したと推定され、現在残っているのは約650点とされています。
ここにはヴァイオリンだけでなく、ヴィオラやチェロなども含まれます。
本物は数が限られているうえ、それぞれ状態や来歴が違います。
ですから「ストラディバリウスの新品価格」や「公式の最安価格」というものが存在するわけではありません。
数万円~40万円で売られているストラディバリウスは本物?
ネットオークションや中古市場を見ていると、数万円だったり、数十万円だったりする「ストラディバリウス」を見つけることがあります。
これを見ると、
「意外と安いじゃん!」
と思いますよね。
しかし、ここは注意が必要です。
「ストラディバリウス」と書かれていることと、アントニオ・ストラディバリ本人が製作したことは同じ意味ではありません。
スミソニアン博物館も、ストラディバリのモデルを模倣し、「Stradivarius」と記されたラベルを持つヴァイオリンが数多く製造されたと説明しています。
つまり、ネットで40万円の「ストラディバリウス」を見つけたからといって、
「本物のストラディバリウスが40万円で買える!」
ということではないんですね。
ここは以前の私も混同してしまいそうになったところですが、本物の価格を調べる場合には必ず区別しておきたいポイントです。
安いストラディバリウスの正体とは?
では、なぜ数万円程度のストラディバリウスが存在するのでしょうか?
その理由を知るためには、「ストラディバリウス」という名前がどのように使われてきたのかを知る必要があります。
「Antonius Stradivarius」のラベルがあっても本物とは限らない
古いヴァイオリンの内部を見ると、
「Antonius Stradivarius Cremonensis Faciebat Anno…」
などと書かれたラベルが貼られていることがあります。
こんなラベルを見つけたら、
「もしかして、とんでもないお宝なのでは?」
と思ってしまいますよね。
しかし、このラベルだけでは本物だと判断できません。
スミソニアン博物館によると、19世紀にはイタリアの名工が製作した楽器をモデルにした安価なコピーが数多く作られ、ストラディバリウスの名前が入ったラベルも使われました。当時は製作者を偽る目的ではなく、どの製作者のモデルを参考にした楽器なのかを示す意味でも使われていたそうです。
ですから、おじいちゃんの家から古いヴァイオリンが出てきて、中に「Stradivarius」と書いてあったとしても、それだけで億単位のお宝が発見されたとは判断できないんですね。
ストラディバリウスモデルやコピー品とは?
ストラディバリウスは、その後のヴァイオリン製作にも大きな影響を与えました。
そのため、ストラディバリが作ったヴァイオリンの形や設計を参考にして製作された「ストラディバリモデル」と呼ばれるような楽器がたくさんあります。
これらは本物のストラディバリウスとは別物です。
ただし、「コピーだから悪いヴァイオリン」という意味でもありません。
あくまでも、「ストラディバリ本人が製作した真作なのか」「ストラディバリのモデルを参考に後世に製作された楽器なのか」を分けて考えることが大切なのです。
本物のストラディバリウスはなぜ高いのか?
では、本物のストラディバリウスはなぜこれほど高いのでしょうか?
これは「コレだ!」という理由が一つだけあるのではなく、いくつもの理由が重なった複合的なものだと考えたほうが分かりやすいでしょう。
現存する数が限られている
まず大きいのが希少性です。
先ほど紹介したように、ストラディバリは1,100点以上の楽器を製作したと推定されていますが、スミソニアン博物館によれば現存するのは約650点です。
世界中に欲しい人がいるのに、本物を新しく作ることはできません。
当然ですよね。
アントニオ・ストラディバリが亡くなった後に作られたものは、どれほど精巧でも本人の作品にはならないからです。
欲しい人がたくさんいる一方で、本物の数は増えない。
この希少性が価格を押し上げる大きな要素になります。
300年以上にわたる歴史的価値がある
ストラディバリウスの価値は、単に「古いヴァイオリンだから」というものでもありません。
ストラディバリは1644年生まれとされ、1737年に亡くなるまでクレモナで楽器製作を続けました。
つまり、現存している本物は約300年前に製作されたものです。
長い年月の中で著名な演奏家が所有したものもあり、楽器そのものだけではなく、その楽器がたどってきた歴史も価値につながっていきます。
製作された時代や個体によって評価が違う
ストラディバリウスなら、すべてまったく同じ価値というわけでもありません。
製作された年代も違えば、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなど楽器の種類も違います。
さらに保存状態や修復歴、来歴なども個体ごとに違います。
そのため、本物だから一律○億円という世界ではなく、一つひとつの楽器が個別に評価されるわけですね。
世界中の演奏家やコレクターが求めている
そして忘れてはいけないのが需要です。
どれほど希少なものでも、誰も欲しがらなければ高い価格にはなりません。
ストラディバリウスは今でも実際に演奏されているものがあり、世界的なヴァイオリニストが使用していることでも知られています。
300年以上前の楽器なのに、博物館に飾られているだけではなく、現役の楽器として演奏されている。
これはすごいことですよね。
希少性、歴史、製作者としての評価、楽器としての需要などが組み合わさって、現在の価値につながっているのでしょう。
ストラディバリウスは本当に音がいいの?
ストラディバリウスというと、必ず話題になるのが「音」です。
「ものすごく高いんだから、誰が聴いても圧倒的にいい音なんでしょ?」
と思ってしまいますよね。
しかし、音については単純に価格だけで判断できるものでもありません。
ヴァイオリンの音は楽器だけで決まるものではなく、演奏する人の技術や弾き方、弓、弦、楽器の調整、演奏する場所など、さまざまな要素が関係します。
ストラディバリウスの音がなぜ特別なのかについても、300年以上たった現在まで議論が続いています。
また、これほど古い楽器を演奏できる状態に維持するためには、専門家による適切なメンテナンスも欠かせません。
ですから、「高い=誰が弾いても必ず最高の音が出る」というほど単純な話ではないんですね。
ストラディバリウスはいくらで取引されたことがある?
ストラディバリウスの価格を語るうえで有名なのが、1721年製の「レディ・ブラント(Lady Blunt)」です。
このヴァイオリンは2011年、Tarisioのオークションで980万8,000ポンド(約1,589万ドル)で落札されました。Tarisioは当時、ストラディバリウスのオークション価格として世界記録だったと発表しています。
とんでもない金額ですよね……。
ただし、このような記録的な高額取引を見ても、
「ストラディバリウスは全部この値段」
という意味ではありません。
個体によって評価が異なるからこそ、単純な最安値・最高値だけでは説明できない世界なのです。
安いストラディバリウスを見つけたらどう判断する?
ネットオークションや家の物置などで「Stradivarius」と書かれたヴァイオリンを見つけたら、どうすればいいのでしょうか。
ラベルだけで本物と判断しない
まず覚えておきたいのが、ラベルだけで本物だと判断しないことです。
ストラディバリウスのラベルを持つ後世のヴァイオリンが大量に存在することは、スミソニアン博物館も説明しています。
反対に、ラベルだけを見て楽器そのものに価値がないと決めつけるのも避けたほうがいいでしょう。
鑑定書や来歴を確認する
本物かどうかを考えるうえでは、その楽器がどこから来たのかという来歴も重要になります。
過去の所有者や売買記録、鑑定に関する資料などが残っている場合は、それらも大切な情報になります。
特に何百年も前の名器となれば、
「中にストラディバリウスって書いてある!」
だけで判断できる世界ではないんですね。
高額な楽器は専門家に確認してもらう
本物かもしれない古いヴァイオリンを所有している場合や、高額な楽器を購入しようとしている場合は、自己判断だけで決めないほうが安心です。
専門家はラベルだけではなく、楽器の形状、木材、ニスなど複数の特徴を比較して真贋を検討します。
また、本物かもしれないと思っても、自己流で修理したりニスを塗り直したりするのは避け、まず専門家に相談するのがよいでしょう。
まとめ
今回は、ストラディバリウスで一番安いものはいくらなのか、本物が高額になる理由について紹介しました。
一番大切なのは、ネットなどで数万円~数十万円で販売されている「ストラディバリウス」と、アントニオ・ストラディバリ本人が製作した本物のストラディバリウスを混同しないことです。
「Stradivarius」と書かれたラベルがあっても、それだけで本物とは判断できません。
本物のストラディバリウスには一般商品のような「一番安い定価」があるわけでもなく、それぞれの個体について製作年代、状態、来歴などを踏まえて評価されます。
そして本物が高額になる背景には、現存数の少なさ、300年以上の歴史、製作者としての評価、演奏家やコレクターからの需要など、さまざまな理由があります。
単に「古いから高い」「音がいいから高い」というだけではないんですね。
300年以上前に作られた楽器が、現在でも世界中で大切にされ、実際の演奏にも使われている。
そう考えると、ストラディバリウスが「歴史ある名器」と呼ばれ続けている理由も分かる気がしますね。


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