美術館で絵画を見ていると、「印象派」「抽象派」といった言葉を耳にすることがあります。
作品の説明でも「印象派の画家・モネ」のように紹介されていますし、「私は印象派が好き」「抽象画が好き」と好みを表すときにも使われますよね。
なんとなくニュアンスは分かっていても、
「印象派と抽象派って、具体的に何が違うの?」
と聞かれると、意外と言葉にするのが難しいものです。
簡単にいうと、印象派は風景や人物など現実に見えるものを題材にしながら、光や色、その瞬間の印象を表現したもの。抽象美術は、現実のものをそのまま再現することにこだわらず、色・線・形などを使って表現したものです。
今回は、美術に詳しくない人にも分かるように、印象派と抽象派の違いや特徴、代表的な画家、作品を見るときの見分け方まで簡単に紹介します。
印象派と抽象派の違いを簡単に比較
まず、印象派と抽象派の違いを簡単に整理してみましょう。
| 比較 | 印象派 | 抽象美術 |
|---|---|---|
| 描くもの | 風景や人物など現実の対象 | 現実の対象を描く場合もあれば、具体的な対象を持たない場合もある |
| 特徴 | 光や色、その瞬間の印象を重視する | 色・線・形などによる表現を重視する |
| 見たとき | 何が描かれているか分かりやすい作品が多い | 何を表しているのか一目では分からない作品も多い |
| 主に発展した時代 | 19世紀後半 | 20世紀以降 |
| 代表的な画家 | モネ、ルノワールなど | カンディンスキー、モンドリアンなど |
大きな違いは、現実に見えているものとの関係です。
印象派の絵を見ると、風景、人物、建物など「何が描かれているのか」は比較的分かりやすいですよね。
ただし、それを写真のように正確に描こうとしているわけではありません。
たとえば同じ風景でも、朝と夕方では光も色も変わります。
その瞬間に画家の目に映った光や色、雰囲気などを絵にしようとしたところに印象派のおもしろさがあります。
一方、抽象美術では、必ずしも「目の前にあるものを、それと分かる形で描く」必要はありません。
色や線、形などを使って表現するため、見た人によって感じ方が大きく変わる作品もあります。
「何が描いてあるのか分からない」と感じることもありますが、それも抽象画を鑑賞するおもしろさのひとつなのかもしれません。
印象派とは?特徴を簡単に説明
印象派をものすごく簡単に表すなら、
「目の前の風景などを題材に、その瞬間の光や色、目に映った印象を表現した絵」
と考えると分かりやすいと思います。
明るい色彩を使った作品も多く、屋外の風景や人々の日常などが描かれています。
印象派は「見たままを描く絵」とは少し違う
印象派というと「見たものをそのまま描いた絵」と思ってしまいそうですが、実際には少し違います。
私自身、最初は学生時代の写生大会のようなものをイメージしていました。
山を見ながら山を描く、木を見ながら木を描く。
確かに印象派も現実にあるものを題材にしますが、写真のように細部まで忠実に再現することが目的ではありません。
重要なのは、そのとき画家の目にどう見えたのかということ。
特に光によって変化する色や、その場の空気感などを捉えようとしたところが印象派の特徴です。
そのため、近くで見ると絵の具のタッチが目立つ作品でも、少し離れて眺めると風景や光の雰囲気が感じられることがあります。
印象派が生まれた背景
印象派が登場したのは、19世紀後半のフランスです。
大きなきっかけになったのが1874年、パリで開かれた画家たちによる展覧会でした。
参加した画家にはモネ、ルノワール、ドガなどがいます。
「印象派」という名前に大きく関係しているのが、クロード・モネの作品『印象・日の出』です。
当初「印象派」という呼び方は批評的な意味合いを持っていましたが、その後、この新しい絵画表現を表す名称として定着していきました。
今では「印象派」と聞くだけでモネの絵を思い浮かべる人もいるくらい、有名な美術のジャンルになっていますよね。
印象派の代表的な画家
印象派を知るうえで代表的なのが、クロード・モネです。
モネは同じ場所やモチーフを、時間や季節を変えながら繰り返し描いています。
同じものを描いているのに、光が変われば作品の印象まで変わる。
印象派の特徴がとても分かりやすい画家だと思います。
そして、もう一人有名なのがピエール=オーギュスト・ルノワール。
人物や人々の楽しそうな日常を描いた作品も多く、明るく柔らかな雰囲気が魅力的です。
エドガー・ドガも印象派と関連の深い画家で、特に踊り子を描いた作品などで知られています。
ただ、同じ「印象派」と呼ばれる画家でも、作品を見るとそれぞれかなり違うんですよね。
その違いを見比べるのもおもしろいところです。
抽象派とは?特徴を簡単に説明
続いて抽象派です。
「抽象派」という言葉で検索されることも多いですが、美術の説明では「抽象画」「抽象美術」といった言葉もよく使われます。
簡単にいうと、
抽象美術とは、現実に見えているものをそのまま再現することにこだわらず、色や線、形などを使って表現する美術です。
印象派との違いが、少し見えてきますよね。
抽象画は色や線、形などで表現する
抽象画を見ると、
「何が描いてあるのか分からない」
「どこを見ればいいの?」
場合によっては、
「これなら自分でも描けそう……」
なんて思ってしまうこともあります。
でも、具体的な物を上手に再現することだけが抽象画の目的ではありません。
色、線、形、絵の具の動きなど、それ自体が表現になります。
そのため、鑑賞するときにも「これは何の絵なのか?」だけを考えなくていいんですよね。
「この色を見るとどんな気分になるか」
「この線からどんな動きを感じるか」
「なぜこの形がここにあるのだろう」
そんなふうに自由に感じながら見ることもできます。
背景やモチーフを知ってから見ると、「ここにこんな意味があるのかな?」と想像する楽しみも生まれます。
私は、この自由に想像できるところが抽象画のおもしろさだと思います。
抽象美術が生まれた背景
抽象美術は、20世紀に入って大きく発展していきました。
その背景には、19世紀までの「現実をどう描くか」という考え方から離れ、新しい表現を模索する画家たちの動きがあります。
20世紀初頭にはキュビスムなど、それまでとはまったく違う表現が登場します。
さらに幾何学的な形や色を重視する表現が生まれ、時代が進むと、絵の具を大胆に扱うアクション・ペインティングや、広い色面を使うカラーフィールド・ペインティングなど、さまざまな抽象表現へ発展していきました。
ひとことで「抽象画」といっても、実は作品のタイプはかなり幅広いんですね。
抽象美術の代表的な画家
抽象美術を代表する画家として有名なのがワシリー・カンディンスキーです。
色や形などを使った抽象的な作品を制作し、抽象美術の発展に大きな役割を果たしました。
そして、ピート・モンドリアンも代表的な画家です。
モンドリアンという名前を知らなくても、赤・青・黄などの色と縦横の直線を組み合わせた作品を見れば、「見たことがある!」と思う人もいるかもしれません。
印象派のモネやルノワールとは、見た目からしてかなり違います。
代表的な作品を実際に見比べてみると、「印象派と抽象派の違い」がより感覚的に理解できると思います。
印象派と抽象派はどうやって見分ければいい?
美術館で作品を見たとき、印象派と抽象派をどう見分ければいいのでしょうか。
初心者なら、まず「何が描かれているのか分かるか?」を見てみると分かりやすいです。
風景や人物など具体的な対象があり、さらに光や色、その瞬間の雰囲気が強く感じられるなら、印象派の特徴に近い作品と考えられます。
一方で、具体的な対象を描くことよりも、色・線・形そのものが作品の中心になっているなら、抽象美術の特徴に近くなります。
ただし、美術にはたくさんの流派や表現があり、「具体的な物が描いてあるから印象派」「何が描いてあるか分からないから抽象画」と単純に決められるわけではありません。
あくまでも最初に作品を見るときの目安として考えるのがよさそうです。
画家の名前や制作された年代、作品の解説まで読むと、「だからこういう描き方なんだ」と分かって、さらに楽しめます。
印象派と抽象派はどちらが見やすい?
どちらが見やすいかは、人によってかなり違うと思います。
印象派は風景や人物などが描かれている作品が多いため、初めて見ても「何を描いた絵なのか」が分かりやすいですよね。
「光がきれいだな」
「この風景、素敵だな」
と、比較的入りやすいように感じます。
一方で抽象画は、一目見ただけでは何を表現しているのか分からないこともあります。
でも私は、見るなら抽象画も好きなんですよね。
何が正解なのかを探すのではなく、
「私はこう感じる」
「自分だったら同じテーマをどう表現するだろう?」
と考えられるところに楽しさがあります。
同じ作品を見ても、人によってまったく違う感想が出てくるかもしれません。
印象派と抽象派のどちらが優れているというものではなく、自分がどんな作品に心を動かされるのかを楽しむのが一番なのではないでしょうか。
「印象派だから好き」「抽象画は分からないから苦手」と最初から決めず、実際の作品をゆっくり眺めてみると、意外な好みが見つかるかもしれません。
まとめ|印象派と抽象派の違いを知ると絵画鑑賞がもっと面白くなる
印象派と抽象派の違いを簡単にまとめると、
印象派は、風景や人物など現実にあるものを題材にしながら、その瞬間の光や色、目に映った印象を表現したもの。
それに対して、
抽象美術は、現実のものをそのまま再現することにこだわらず、色・線・形などによって表現するものです。
こうして比べてみると、かなり違いますよね。
ただ、どちらも画家が見たもの、感じたもの、考えたものを作品として表現していることに変わりはありません。
背景を何も知らずに「好き」「きれい」と感じるのも絵画の楽しみ方ですし、画家や時代背景を知ってからもう一度見ると、最初とは違った作品に見えることもあります。
私自身、印象派と抽象派の違いを考えていたら、久しぶりに美術館でどちらの作品もゆっくり鑑賞したくなりました。
「これは印象派かな?」「この抽象画から自分は何を感じるかな?」
そんなことを考えながら見てみると、これまでより絵画鑑賞がおもしろくなるのではないでしょうか。


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